林亮介『迷宮街クロニクル 2 散る花の残すもの』

 常に死と隣り合わせの街・迷宮街。日本で最も死に近いこの街では、クリスマス間近の今日も、探索者たちが地下迷宮へともぐっていく。そこに待ち受けるのは、次の階層へと進む栄光か、それとも命を散らす悲劇なのか・・・


 タイトルを見たときから、もうわかりますよね。近しい人がまた死ぬんだなって。多くの登場人物をたいしたことではないかのように退場させてゆく作品だということは既にわかっていますから、あとは誰?ってことだけですよ。
 だからって、彼らの部隊ですか。少しずつ軌道に乗ってうまくいきそうだったのに。これこそ悲劇じゃないですか。しかも、描写は直前までで、その最期は描かれていないと言うのが、余計に涙を誘います。
 もちろん、残された人たちの悲しみ方が尋常でないのはよく理解できます。部隊は違うし、この迷宮街に来て出会ってからの日は浅いとはいえ、やはりこの過酷な環境でともに生きてきた間柄ですから。読者としてもやはり思い入れは大きいわけです。このあたり、主人公の真壁だけでなく様々な人物によるを用いた作者の意のままということでしょうか。
 この死に対して、真壁が見せた動揺は思いのほか小さく感じられ、迷宮街とはそこまで急激に人を変えてしまうのかと驚いたりもしたのですが、やはりそんなこともなかったようです。真壁の真壁らしい部分に妙に安心しました。
 彼らの死はもちろんですが、東京でのもうひとりの死は、またこの世界、この物語での死というものを強く意識させられるものでした。


 「ノーモアクリスマス!」のパレード、あるいは理事相手の相撲大会とか、探索者たちの日々の楽しみ方、遊び方は極端に豪快です。その辺も常に死と隣り合わせの環境にいる探索者たちの、今をできるかぎり楽しむ、何事にも全力で取り組むという意識の表れのような気がします。
 いよいよ次で完結。真壁たちのパーティ「チーム笠置町」にもきっと何らかの結論が出るのでしょう。そこに後藤たちの商社がどんな風に絡むのか、ちょっと気になります。でも終わってしまうのが惜しいなあ。


関連作:『迷宮街クロニクル 1 生還まで何マイル?

2009年4月23日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)
迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)林亮介/津雪
ソフトバンククリエイティブ 2009-04-15
売り上げランキング : 4059

おすすめ平均 star
star前巻よりいいのでは?
star万人向けの作品ではないと思います
star連続して存在する別世界
stars死亡率14パーセント。
stars林亮介と津雪が。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
asin:4797354097 rakuten:book:13173101