村山由佳『ダブル・ファンタジー』

 夫と二人三脚で脚本家として名を上げてきた高遠奈津。だが主夫として支える夫の束縛に耐えられず、尊敬する志澤に誘われて家を飛び出した。そこは今まで知りえなかった世界。男の嘘や自分自身のことを知った奈津は、顔を上げ前を向き、男たちと体を重ね続ける・・・


 今までの村山さんさんの作品と比較すると、随分イメージが違う作品です。そう思ったのはきっと僕だけではないはず。どこかに「今までが白や青なら、今回は黒」という村山さんの話の中がありましたが、本当にその通り。
 この作品のストーリーはあまり掴みどころがありません。簡潔に表現するならば、自分に正直に、生きたいとおりに生きた女性の物語でしょうか。そんな物語はほかにも数多くありそうですが、この場合はそのベクトルが性愛の方向に向いていたというだけです。ひたすらスポーツに打ち込んだとか、あるいは仕事に夢中だとかいうのとなんら変わらないような気がします。ちょっとスキャンダラスですが。


 ただ、いつもよりも主人公に感情移入がしにくいように感じました。扱っているテーマがこれですから、性別が違うとイマイチのりにくい面があったかもしれません。女性読者ならまた違う可能性も考えられます。


 今までとは印象の違う作品ではありますが、村山さんが書く文章はやはりどこか瑞々しさを感じるものでした。健在ですね。

2009年3月20日読了 【5点】にほんブログ村 本ブログへ
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