静月遠火『パララバ -Parallel lovers-』
一度も会ったことはないけれど、大切な人。電話だけの関係だった綾と一哉。なのに、初めて彼の顔を見たのは、彼の通夜だった。だが、その夜かかってきた電話はまぎれもなく彼の声で、しかも戸惑う綾に一哉は言うのだ。「死んだのはお前のほうじゃないか」と・・・
第15回電撃小説大賞金賞受賞作。
物語は、互いの「死んでしまった」大切な人への切ないラブストーリーとしての要素と、ふたつの世界ができたとき何があったのかを探るミステリ的な要素があります。こういう物語はとても好きです。
時間移動と平行世界という違いはありますが、『タイム・リーブ』の影響を強く受けている作品のように感じました。作者本人があとがきで『タイム・リーブ』の名前を出すぐらいですから、当然でしょう。
ただ、どちらにしても若干中途半端です。切ない路線ならばやはりとことんまで突き詰め、読者を泣かせるべきでしょう。ミステリならもう少し論理性や意外性で勝負してほしかったですね。もっとも、その辺にこだわりを強く持ちすぎるとそれなりの長さが必要となり、電撃小説大賞の紙幅を超えてしまう可能性も想像できます。これが妥協点でしょうか。
結果的にちょっとずついいとこ取りをしようとして、小さくまとまってしまったようです。結末はきれいにまとめられていますが、賛否両論ありそうな着地です。ある程度予想通りでしたし、もっと違う結末も考えられそうですが、これは感覚の問題。一哉の側ではどんなだったのでしょう。それも気になります。
携帯電話という現代のマストアイテムをうまく取り込んだ学園ラブミステリ。次回作もこの路線からあまり離れないことを期待します。
パララバ―Parallel lovers (電撃文庫) | |
静月遠火 アスキーメディアワークス 2009-02 売り上げランキング : 33744 おすすめ平均 感想 佳作ですが、偉大な先達には及ばすという印象 流石の内容でした 受賞作らしい1回読み切りの完結作 面白いです。皆様にお奨めいたします。 Amazonで詳しく見る by G-Tools asin:4048675184 rakuten:book:13124397 |