辻村深月『太陽の坐る場所』

 毎年行われている高校のクラス会。東京へ出た者と残った者、仕事や家庭、それぞれの都合もあり出席率は芳しくない。毎年欠席を続ける女優のキョウコを呼ぼうと、出席したメンバーは直接アプローチを試みた。そこで明らかになるのは・・・


 なんだかあまりにも痛々しい作品です。何がって、登場人物それぞれが抱えてきた想いが。憧れだったり、嫉妬だったり、優越感や劣等感だったり。わかるわかる、その感覚。
 それはやはり彼らが毎日をともにした高校時代に端を発しているのだけれども、ずっと引きずっていたり、あるいは不意に呼び起こしたりという形で表に出す手口がなんとも巧み。しかも、社会に出てからの彼ら彼女らがおかれている状況ともうまく重ねられ、違和感がありません。「この人は10年前、こんな高校生だったのか。然もありなん」という感じ。


 ただ、辻村さんが仕掛けるあれは、最初からちょっとあからさまでした。辻村作品を初読の場合はともかく、2、3作でも読んでいればその構図にはある程度気付く気がします。あれが必然とされるような理由付けもされていますが、たまにはあれなしでもいいんじゃないでしょうか。いや、あれあってこその辻村深月なのかな。きらいじゃないのですが。


 子供や学生を主人公にした作品がほとんどだった辻村さんですが、この世代も問題なくこなしましたね。大人になった人たちの心理に重きを置いた、読ませる作品です。

2009年3月1日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
太陽の坐る場所
太陽の坐る場所辻村深月
文藝春秋 2008-12
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おすすめ平均 star
star怖い!すごい迫力でした。
star一人でやってろ
star本当に囚われているのは……
starsミステリー……なのかな?
stars学生時代の残酷な思惑に共感

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