ゆずはらとしゆき『空想東京百景』

 昭和二十年八月。東京に三発目の新型爆弾が投下された。それは、広島や長崎でのそれとは異なる呪詛爆弾。数十年は草木も生えぬと言われた東京だが、その敗戦から十数年、数年後にオリンピックの開催を控えるほどに復興した。男装の美少女探偵矢ノ浦小鳩のもとには、今日も新たな依頼が・・・


 これは本物の奇書。
 昭和三十年代の東京、しかもパラレルワールドを、虚実様々なものを組み合わせて見事に構築した奇書。この完成度の高さはなかなか表現の仕様がないのです。巨人では投手として大成しなかった馬場正平が日本人初のメジャーリーガーになったりなんてホンの序の口。ショーマンシップに満ち溢れた大相撲(しかも巨大化する)や、半機械化された警視庁0課の刑事など、限りなく現実に近い部分と限りなく妄想全開の部分が渾然一体となってこの世界をつくりあげているのです。
 そう、物語の主役はこのパラレル東京、この街、この世界。
 また、ゆずはらさんの世界を補足する訳ではないでしょうが、かなりの分量で挟み込まれるtoi8さんのイラストが、この世界をより強固なものにしています。


 ただ、この本を本当におもしろいと思えるか否かは、この世界の全容をどれだけつかめるかということにかかっているように感じました。本文はもちろんのこと、toi8さんのイラストや細かく記された注釈、年表までも堪能し、理解してこそおもしろいといえるのだと思うのです。さすがに僕はその域まではたどり着けませんでした。やはり、500ページ近いボリュームとこの濃密な世界はちょっと敷居が高いようです。


 おもしろかったとは迂闊に言えないので、すごかったと言わせてもらいます。第三期が出たなら、きっと読むと思います。

2009年2月20日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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