加藤実秋『インディゴの夜 ホワイトクロウ』

 オープンから三年を迎えたclub indigo。一風変わったホストクラブだが心機一転、改装することに。改装期間中も休業するわけにはいかず、とりあえずなぎさママの紹介もあり仮店舗を構えることにした。バタバタしている最中、ホストたちはそれぞれにプライベートでトラブルを抱え・・・


 シリーズ第三作は、club indigoから飛び出したサイドストーリーのような短編集です。
「神山グラフィティ」
 ジョン太がいきつけにしている神山食堂。魚はもちろん、バイトの可奈が気に入ったから。だが、商店街ではシャッターへの落書きが問題になり・・・最初からあの人が怪しすぎるのは仕方ないか。しかし、植木鉢はひどいのでは。心の奥底に溜まっているものは吐き出すタイミングが重要かつ難しいですね。
「ラスカル3」
 アレックスが所属しているジムの会長が、罠にはまって一千万もの借金を抱え監禁された。アレックスは一志の一計に乗り・・・いやあ本当に詰めが甘いアレックス。まあ、あの計画でうまくいくというのもどうかと思いますが。同じジムのボンサックがおもしろかったです。あんなギミック無理でしょうけど。
「シン・アイス」
 公園で死体を見つけた犬マンとタクミ。タクミはホームレス仲間のアキオさんに殺人容疑がかかっていることから、犬マンに助けを求める・・・なんとなくあっけなく終わってしまったようで、ちょっと物足りない。悲劇なんですけどね。
「ホワイトクロウ」
 indigoの改装を手がける笠倉の片腕、白戸が失踪した。常連客でもある彼女のことを皆で心配していると、外国人から「たすけて」という電話が・・・いつもどおり晶の語りということで、読み慣れているせいかしっくりきました。ただ、失踪の原因というのがあまりに見え透いていて、もうひとひねりあってもいいような気がしました。


 過去二作に続く短編集。それだけに、今までとは違うものを目指したかったのかもしれません。それでこのような作品を揃えたのかなと憶測したのですが、結果としてclub indigoじゃなくてもいい話になってしまったようです。表題作「ホワイトクロウ」はともかく、他の三編はいずれもホストが主人公なのですが、indigoそのものはほとんど関係ないのです。これはちょっと残念。物語そのものは小粒ながらもおもしろいものが揃っていただけに。


収録作:「神山グラフィティ」「ラスカル3」「シン・アイス」「ホワイトクロウ」
関連作:『インディゴの夜』『インディゴの夜 チョコレートビースト

2009年2月11日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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