永井するみ『レッド・マスカラの秋』

 雪絵とともに友人ミリが出演するファッションショーを見に行った凪。赤いマスカラをつけたミリはモデルの中でも一際印象的で、ショーは大成功だった。だが、楽屋でのミリは様子がおかしい。聞くところによれば、イリヤというモデル仲間が瞼を腫らしショーに出られなかったのは、ミリが渡した赤いマスカラによるという・・・


 『カカオ80%の夏』に続くシリーズ第二作。意外なことに永井さんはシリーズキャラが初めてなのだとか。
 あまり人と群れることを好まなかった凪が、友人ミリのために動くという。そのこと自体が前作との大きな違いであり、同時に凪の成長とシリーズの進展を感じました。こういうのはシリーズものを読むときにちょっとうれしくなります。
 凪の行動はどちらかといえば思い付きというか無防備というか、あまり思慮深くは感じられません。しかしながら、むしろそういった行動、あるいは直線的な思考が女子高生らしくも思われます。あまり大人びていても彼女たちの年代の雰囲気は出せないでしょうし、逆もまたありえたでしょう。YAの読者を想定するならば、その年代に共感を得られるような等身大の人物像として適当だったのではないでしょうか。


 ただ、ストーリー展開はややご都合主義的に思われ、残念です。もっとも、凪たちのキャラクターを描くことを第一義と考えるならば、そんなことにとらわれる必要はないかもしれません。
 夏、秋と続いたことから憶測すると、おそらくこのまま冬、春とあと二回は凪に会えるでしょう。そのときをまた楽しみにしたいです。


関連作:『カカオ80%の夏

2009年2月8日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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