若竹七海『プラスマイナスゼロ』
舞台は葉崎。不運につきまとわれたお嬢様・テンコ、極悪不良少女・ユーリ、そしてすべてにおいて全国平均というミサキは、山の上にそびえる葉崎山高校に通う凸凹トリオ。三人の前に落ちてきた蛇は、彼女たちを死体へといざなった・・・
7:3か8:2でユーモアが打ち勝ったかのようなミステリ。いつもの葉崎市シリーズです。
●「そして、彼女は言った〜葉崎山高校の初夏〜」
ドジなお嬢様テンコが見つけたのは素っ裸の女の死体だった・・・『告白。』で既読(「話を聞いて」改題)。やはりこのブラックテイストはたまりません。
●「青ひげのクリームソーダ〜葉崎山高校の夏休み〜」
閑散とした海の家跡地。三人はクリームソーダを食べながらオーナーの噂をしていたが・・・この結末、続きをもう少しだけ読みたかった。読みすぎない程度に。
●「悪い予感はよくあたる〜葉崎山高校の秋〜」
収穫祭の日。パチンコを使った悪戯で謹慎処分中の尾賀が出没しているらしい・・・見事にやられました。思わず読み返したくなります。ポイントはいくつもあったのに。
●「クリスマスの幽霊〜葉崎山高校の冬〜」
アルバイトで病院に行った三人。ユーリの姉は上品そうな老婦人と同じ部屋で・・・ちょっとしたアルバイトが意外な方向へ飛んでいく様がおもしろい。こういう事例、実際にありそうな気がします。
●「たぶん、天使は負けない〜葉崎山高校の春〜」
ユーリの思いつきで、卒業生を送る会であるパフォーマーの技を披露することに・・・これ、見たくないですよね。卒業生を送る会でなんて。その辺がユーモアなんですが。
●「なれそめは道の上〜葉崎山高校、1年前の春〜」
プラスとマイナスとゼロ、そんな形容をされるバラエティに富んだ三人はどのように出会ったのか・・・言いたいことを言える、というのはどれほど重要でしょうか。巡り会ったそのときから三人のキャラクターが出ているのがおもしろいですね。
三人の特徴が強く打ち出された作品集です。決して特別珍しくもないキャラクター構成だと思うのですが、プラスとマイナスとゼロの関係を絶妙に組み合わせて、ユーモア溢れる部分とシリアスな部分にメリハリをつけています。
ミステリとしてはやや小粒で、若竹ミステリを期待した方はちょっと残念に思うかもしれません。しかし、これは楽しい青春小説であり、そして何より若竹さんらしいブラックな味わいがしっかり含まれていて、楽しませてくれます。
そうそう、角田港大先生も登場。やっぱりあの内容はよろしくないんじゃないですか。
収録作:「そして、彼女は言った〜葉崎山高校の初夏〜」「青ひげのクリームソーダ〜葉崎山高校の夏休み〜」「悪い予感はよくあたる〜葉崎山高校の秋〜」「クリスマスの幽霊〜葉崎山高校の冬〜」「たぶん、天使は負けない〜葉崎山高校の春〜」「なれそめは道の上〜葉崎山高校、1年前の春〜」
関連作:『ヴィラ・マグノリアの殺人』『古書店アゼリアの死体』『クール・キャンデー』『猫島ハウスの騒動』
- 粋な提案さま(2009.02.16追加)
プラスマイナスゼロ | |
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