浅倉卓弥『北緯四十三度の神話』

 両親を事故で失い祖父母に育てられた一歳違いの姉妹、桜庭菜穂子と和貴子。高校、大学、社会人と進むにつれ、いつしかふたりの間にできた溝。それを決定的にしたひとりの男の事故死。彼は菜穂子の同級生であり、和貴子の婚約者だった・・・


 切なく、あたたかい、そんな物語でした。
 物語には特別大きな山や谷があるわけではなく、どちらかといえば静かに進行していきます。それは、どういった形で着陸するのか、読み進める中でおぼろげながらも見えてしまうほど。そう、まるでどこかで読んだことがあるような。
 それだけに、こういう物語こそ作家の力量が試されるような気もします。どんな風に味をつけて、どんな形で自分なりの色を出すのか。
 結果としてこの物語の場合、どうだったのでしょうか。溝を作ってしまったふたりの関係はとても切なく、そして結末にはあたたかい気持ちにさせてくれる物語だったことは確かです。
 そこにたどり着くまでの部分に浅倉さんは浅倉さんの色を出そうとしたように思います。その方法がよかったのか、この物語に相応しかったのか、ちょっと考えたくなります。純粋に一発逆転のミステリならばよかったかもしれませんが、姉妹の間のわだかまりを溶かす感動の物語としては何かもっといい方法がなかったのかなという気分です。
 すべてが台無しになった、とまでは言いませんがいい物語だっただけに残念かな。

2008年12月20日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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北緯四十三度の神話
北緯四十三度の神話浅倉卓弥
文藝春秋 2005-12
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