杉井光『さよならピアノソナタ4』

 冬がやってくる。もうクリスマスは目前。そして、真冬の誕生日も。だが、文化祭が終わってもナオはその思いを打ち明けられずにいた。フェケテリコは次のライブに向け準備を整えようとするが、冬の訪れはナオの優柔不断のツケを払うときでもあった・・・


 シリーズ完結編。あっという間に終わってしまって、なんだかもったいない気すらします。「サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」のように、永遠に決断せずに繰り返されるというのもありかもしれませんが、そう思われつつ幕を下ろすのが潔いですね。
 あいかわらずなのはナオのヘタレ具合。とにかくはっきりしないし、読者としてはシリーズ当初から想像できていたことなので、ヤキモキすることこの上ありません。さすがに、真冬へのプレゼントを千晶に相談したりするあたり、ナオの鈍さというか無神経さには呆れました。でも、ナオが決断できたなら、この物語はきっと一年も続かなかったでしょう。
 また、誰よりも哲朗がおいしいところを持っていきました。やっぱり父親なんですね。決めるべきところは決めるというか。


 それにしても、この季節にジョン・レノンはずるいなあ。もう、圧倒的に。だって「Happy Xmas (War Is Over)」ですよ。単なる青春恋愛小説というだけでなく、音楽を効果的に用いて物語を作り上げるあたり、本当にすばらしい。
 ああ、本当に終わってしまいました。でも、やっぱり後日談のようなものを書いてもらえないかな、なんて考えてしまいます。オススメ。


関連作:『さよならピアノソナタ』『さよならピアノソナタ2』『さよならピアノソナタ3

2008年12月16日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)
さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)杉井光植田亮
アスキーメディアワークス 2008-12-05
売り上げランキング : 445

おすすめ平均 star
star確かに面白いのだが…
star切ない……けれど美しい
starかけあう旋律
starsついに完結

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
asin:4048674293 rakuten:book:13094510