東野圭吾『探偵ガリレオ』

 若者の後頭部から火が出た! 中学生が拾った精巧なデスマスクの正体は! 男の死体は心臓付近の細胞が完全に壊死していた! 普通では考えられないような奇妙な事件が起きると、捜査一課の草薙は帝都大学へ足を運ぶ。友人である物理学助教授・湯川の力を借りるために・・・


 テレビドラマ『ガリレオ』の原作となった『探偵ガリレオ』シリーズ第一短編集。
「燃える(もえる)」
 人通りの少ない通り。たむろしていた若者の後頭部から火が上がった・・・人体発火だのプラズマだのというものを扱っているのに、最後には物悲しい余韻を残す物語に仕上がっているあたりに巧さを感じます。
「転写る(うつる)」
 中学校の文化祭に出されたアルミ製のデスマスク。それはある男の顔にそっくりだった・・・デスマスクができる過程には「うーん」と唸るほかありませんでした。
「壊死る(くさる)」
 浴室で心臓麻痺で亡くなった男。その胸にある痣は細胞が完全に壊死していた・・・これは怖い、かもしれない。もっとも、殺害方法から簡単に足が付くでしょうけど。最後のオチが見事でした。
「爆ぜる(はぜる)」
 湘南海岸で突然火柱が上がり、遊泳中の女性が爆死した。だが、その原因がつかめない・・・なんとも派手な事件ですね。あれは確かに危険って教わりましたよ。こんなことで狙われるなんて、オチオチ仕事もできません。
「離脱る(ぬける)」
 高熱で寝込んでいた少年がそこからは見えないはずの風景を絵にした。幽体離脱? その絵が男のアリバイに・・・なんとも不思議な幽体離脱の謎に挑む湯川。子どもの純粋さと大人の欲が対比され、ちょっと後味が悪く感じられました。


 まさに本格物理ミステリ。これでもかとばかりに物理トリックをつぎ込んできます。単純に理系の学者が登場するミステリや、いわゆる物理トリックを使っているミステリではなく、物理学者が物理の知識を利用して謎を解く本格物理ミステリなのです。
 一種のワンアイデアものなのでしょうが、如何せんそのワンアイデアのおもしろさとミステリ作品としてのおもしろさが直結していないような気がしてなりません。理系の人が読むと違うのかな。僕は文系なので・・・
 これが、『容疑者Xの献身』へとどうつながっていくのか、見ものではあります。


収録作:「燃える(もえる)」「転写る(うつる)」「壊死る(くさる)」「爆ぜる(はぜる)」「離脱る(ぬける)」

2008年11月18日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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