村崎友『修学旅行は終わらない』
普遍的な高校生の修学旅行。その最後の夜、教師の見回りスケジュールを手に入れた甚太たちは、ひとつ上の階にある葵たち女子の部屋へ突入を試みるが、思ってもいない騒動に・・・
ひとつの出来事を多くの登場人物の視点で描く一人称多視点。これにより思春期の高校生たちそれぞれの感情を表現するだけでなく、不可思議な事件を引き起こすことに成功した作品。
多くの人々にとって重要なイベントである修学旅行。それだけに思い入れも一入。これはもう、この設定を選んだ者勝ちでしょう。
視点が増えるに従って読者に新しい情報がもたらされ、少しずつ景色が変わって見得るのはなかなかおもしろいものでした。ただ、同じ出来事について繰り返し何度も多視点で語られるのは少々くどく感じられ、もう少し視点人物を絞れたらよかった気がします。
また、多視点により散らばったものを最後に収束させる手際はいいものの、回収し切れていない伏線らしきものが残されたのも事実。彼らのその後の物語があるのなら、それを生かしてほしいなあ。
単純に興味や懐かしさから「修学旅行、いいなあ」と思わせるだけでなく、騒動でのおかしさやちょっとした謎を絡ませることで、修学旅行に対する読者の感情を膨らめることに成功しています。
それにしても修学旅行、いいなあ。
修学旅行は終わらない (MF文庫 ダ・ヴィンチ む 1-1) | |
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