早狩武志『ハーフボイルド・ワンダーガール』
幼馴染の水野美佳から呼び出された湯佐俊紀。だが、彼女の告げられた言葉は「ちゃんと、責任とってくれるよね」だった。身に覚えがなく途方に暮れる俊紀だったが、偶然その場を見てしまったミステリー研究会会長の佐倉井綾が救いの手を差し伸べた。本当に潔白なら、犯人を探そうと・・・
新感覚ミステリー? この言葉がとても足枷になっているようです。
読み始めるとすぐわかってしまうのが、この作品唯一最大の謎である子供の父親。冒頭で想像して「本当にそれで合っているのか?」と不安を覚えた人もいるでしょうが、おそらくその想像は間違っていません。
それゆえ、本格ミステリのような謎と論理を想像しているとがっかりされるでしょうが、タイトルから「ハーフボイルド=ハードボイルド未満」などと考えられれば、それほどでもないのでは。私立探偵が足と人脈を駆使して謎を解き明かす物語には違いありません。どれだけ「未満」なのかはまた別の問題。
メインとなる俊紀と佐倉井さんは、互いの足りない部分を補うような関係で真相に迫っていくのですが、目的は違うのに知りたいという点で共通するふたりがなかなかおもしろい関係です。ただ扱う問題がシリアスすぎたかも。このコンビでまた違った事件を読んで見たい気がします。
もっとも、同じ登場人物でも美佳はいただけません。この身勝手さはちょっと理解しがたいです。彼女をヒロインとして捕らえるとかなりいやな作品かも。ただし、この物語がどういった人物関係を描いたものか、その捉え方次第で抱く印象もまたかなり違ったものになると思いますよ。
ハーフボイルド・ワンダーガール (一迅社文庫 は 2-1) | |
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