杉井光『さよならピアノソナタ3』
イベント続きの二学期。初めての単独ライブを前にナオたちはうたい、走る。そんな折に来日したヴァイオリニストのユーリは、かつて真冬と演奏旅行をともにしたこともある美少年で、しかも真冬のギターの師でもあった。文化祭でのライブを間近に控え動揺するナオ・・・
合唱コンクール、体育祭、文化祭と盛りだくさんの二学期。流れこそ連続しているものの、それぞれがそれぞれのおもしろさを持っています。ひとつひとつのイベントに1冊を費やしてもおかしくないほど。かなり充実しています。
とにかくナオがあきれるほどに鈍感ですね。普通ならばもっと早くに気付いているでしょうに。これだけ真冬や千晶がほのめかし、ユーリが問いを投げかけているのですから。いや、真冬の気持ちに気付きながらも、自分の気持ちをただひたすら真っ直ぐに言葉にし、行動で表現するユーリのほうが普通じゃないのかも。いいキャラですけどね。
対して、口下手ながらも一生懸命に気持ちを伝えようとしたり、あるいは躊躇したりする真冬。でもそのひとことひとことが妙に印象的だったりします。
「困るの! もっとしっかりしてくれないと! あなたは、わたしの――」(P127より)
このあとに続く言葉はなんだったのか? どうぞ最後まで読んでください。
一方、ナオにはすっかり放っておかれた状態の千晶が不憫でなりません。こんなに言葉を尽くしているのに。本当に距離が近すぎるゆえの悲劇です。
楽しませてくれる音楽もの、青春ものだったのですが、ただ最後の切り方はちょっと残念。これはこれできれいに終わっていますが、何かもうひとつふたつあってもよさそうな感じです。それを期待してしまっただけに。
関連作:『さよならピアノソナタ』『さよならピアノソナタ2』
さよならピアノソナタ 3 (3) (電撃文庫 す 9-9) | |
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