早矢塚かつや『死神ナッツと絶交デイズ』

 幌右の前に現れた二つの世界。それは世界が二つに分岐したことを意味していた。ひとつは未来を見ることができる詩夏のいる世界。もうひとつは詩夏のだいしんゆーである絶交少女・夜空のいる世界。どちらかが事故で死んでしまう? 幌右はどちらを選ぶ? 選ぶことができる?


 二つの平行世界を扱ったパラレルワールドもの、あるいは過去に戻って選択肢を選びなおすタイムリーブもの。
 ただし、なかなか予想したとおりの方向へは進まず、よい意味で期待を裏切り続けてくれます。時にはバッドエンドかと思わせるようなことも。このストーリー展開が丁寧に作られていたのがよかったです。最後のエピローグまで含めて。


 不満といえば、タイトルにある“死神ナッツ”についてイマイチ説明不足で、その役割が不明確なところでしょうか。タイトルになっているくらいですから本来はもっと重要な存在であるべきだと思うのですが。まあ、大筋には影響しないのでよしとしますか。
 説明不足といえば、詩夏の未来を見る力や夜空の人の心が見えてしまう力なども説明不足だとは思います。
 しかしそういったことがこの物語のメインではなく、あくまでもごく普通の(と呼んでも差し支えないであろう)少年と少女が、自分たちが願い、「こうでなければならない」と希望する未来のために自己犠牲も厭わず全力であがき続ける物語なのです。
 ですから、やはりパラレルワールドもの、タイムリーブものであること以上に、青春ものというべきなのでしょう。

2008年7月30日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
死神ナッツと絶交デイズ (MF文庫 J は 4-2)
死神ナッツと絶交デイズ (MF文庫 J は 4-2)早矢塚かつや/夕仁
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