みかづき紅月『ぶよぶよカルテット』
教室に忘れたノートを取りに、夜の学校へ忍び込んだ地梨琢己。ピアノの音色に魅せられて音楽室に行くと、弾いていたのは奇抜な行動で知られる先輩音城トリルだった。彼女に気に入られたことでクラスでは白い目で見られるが、それに一番反応したのは琢己の幼馴染で天才バイオリニストの七瀬凛音・・・
タイトルからもたらされる得体の知れないイメージはさておき、とても楽しく透明感のある作品でした。『アンサンブル!』という仮タイトルの方に良いイメージを持っていたのですが、読んでみるとこれはこれでしっくりきます。そういうことなのか、と。
奇人変人のようにいわれるトリルが、思っていたよりもまともなのがちょっと拍子抜けでした。もっとぶっ飛んだ設定かと思っていましたよ。その辺は、なんとなく中途半端でした。いや、この程度のほうがいいのかな。
また、琢己が一旦離れていた音楽にふたたび触れてその楽しさに惹かれていくのと、幼馴染の凛音ではなくトリルに少しずつ魅かれていくのがリンクしているようで、なんとも言えずよかったです。本人がその辺を自覚しているのかわかりませんけどね。
とにかく、音楽の楽しさが伝わってくる作品。これで琢己も彼女たちのように天才的な才能を持っていたりすると全然違うのでしょうが、琢己が愚民というか凡人であるがゆえに、余計に伝わりやすくなっているようです。そのほうが、僕のような凡人でも感情移入しやすいですし。
まだまだ恋は気づいたのかどうかもわからないような状態。ぜひともこの先を読んでみたいと思わせる、明るく楽しい良質のぶよぶよした小説です。
それにしても、「エロいむえっさいむ」って。
ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1) | |
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