松井千尋『ハーツ ひとつだけうそがある』
バイト先のオーナーの息子・鹿島了からの依頼。それは了の弟・周平に成りすまし、従妹の小野木真純の恋人になってほしいというものだった。真純は心臓の病で未来が期待できない身。依頼された宮田輝幸は、「歳よりも大人」「平気でウソをつける」テルにしかできないという了の言葉に、周平として真純のもとへ転校する・・・
じわっとくる、学園ものの恋愛小説でした。
なんと言っても、お金のため、生活のためのバイトと割り切っていたテルが見事に恋に落ちる様がなんとも気持ちいい。罵詈雑言を浴びせかけられていたにもかかわらず、です。
これはやはりこの手のストーリーのお約束かもしれないとは感じるのですが、そうと割り切っても気持ちがいいのです。
ともすれば卑屈にも見えるほど真純のために尽くそうとしたり、バイト期間が終わったあとのことなど微塵も考えられないほどの恋。自分たちがついている嘘のことを考えれば、当然本気になってはいけないはず。それを承知してはいるのに。
だから、テルの正体がばれそうになれば、読んでいる側はその危険性に過剰に反応してしまいます。本当にドキドキものです。
どちらかと言えば、あまりめずらしいとはいえない類型的なストーリー展開。だからこそ、そのわかりやすいおいしいところを活用、強調して、うまく感情移入させてくれます。
最後は本当にまいったなあ。じわっときます。
松井さんの作品は数冊あるようですが、最後の作品はもう5年以上前のようですね。もっとこういう物語を読ませてほしいです。
ハーツ―ひとつだけうそがある (コバルト文庫) | |
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