柴崎友香『青空感傷ツアー』

 仕事を辞めたその日、芽衣は新幹線で美人で傲慢な音生と再会した。音生に引きずられるまま旅に出かける芽衣。それはトルコへ、四国へ、そして石垣島へと続くいい加減な旅。この旅はどこへ行き着くの?


 柴崎さんの小説は、僕にとっていつも本当に難解です。そこに謎があるとか、笑いがあるとか、涙があるとか、そういう類のものではないから。代わりにあるのは、何気ない日常のちょっと変わった延長線。
 今回の旅行は、仕事を辞めたあとの感傷旅行。音生というわがままな女友達(5歳年下)に引っ張られ、トルコへのツアーに参加したり、四国に住む友人の旅館に長居したりというもの。やっぱり日常の延長線上。
 音生は人並みはずれた美貌の持ち主。非常識でわがままで傲慢。普通に考えればあまり読者に好かれないタイプの登場人物ですし、おそらく僕もそう思うはず。なのに、どこか気になる憎めない人物に思えたりします。言うべきことははっきり言い、行動する、どこか一本の筋がピンと通ったようなところがいいのでしょうか。
 対照的に芽衣はもうグダグダ。面食いで、あまり考えず行動して文句ばかり、努力は嫌いで僻みっぽい。おまけに音生に引きづられっぱなしで、何ひとつ決断しないタイプ。だから、音生よりも芽衣にイライラしっぱなしでした。四国でそれをストレートに指摘されるシーンでは、思わず首肯の繰り返し。
 読んでいて、柴崎さんらしさが随所に見られたのですが、ただただ芽衣のグダグダしたところが鼻についてしまいました。それが残念。

2008年6月23日読了 【5点】にほんブログ村 本ブログへ
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