有川浩『クジラの彼』
恋するふたりの間には、果てしなく続く海原やどこまでも広がる大空が。陸・海・空の自衛隊は、恋するふたりにとってちょっと特殊な環境の職場。男前でかわいい彼女たちの、一途で一生懸命な恋愛・・・
自衛隊を舞台にしたあまーい恋愛小説集。耐性のない方は注意してください。
●「クジラの彼」
聡子が数合わせで参加した合コンで出会った男・冬原は潜水艦乗り。次に会えるのはいつなのかもわからない・・・『海の底』からのスピンオフ。ほかにも会えない、待つということを書いた作品はありますが、いつ会えるかわからない、連絡も取れないという意味ではこの恋が一番大変かも。
●「ロールアウト」
絵里が設計した航空機に高科という自衛官から注文がつけられた。それはトイレの個室化・・・これは切実な問題。このトイレに対するこだわり方がいいですね、高科も有川さんも。高科の意趣返しには拍手したくなりました。
●「国防レンアイ」
民間との恋愛に失敗を繰り返す舞子は、陰では鬼軍曹と呼ばれている。同期の伸下は彼女に振り回されっぱなしだった・・・腐れ縁から始まるある意味典型的なラブストーリー。元彼がああいう男たちというのは男運が悪すぎ。民間と自衛隊ではやっぱり国に対する温度差があるんでしょうね。
●「有能な彼女」
年下で有能な彼女にとって、自分は相応しい男だろうか。夏木はそう考えずにはいられない・・・こちらも『海の底』からのスピンオフ。誰だってこういうことを考えるんじゃないですか、よほどの自信家じゃない限り。自衛官だって、有能な潜水艦乗りだって普通の男ですもの。終盤の怒涛の展開が◎。
●「脱柵エレジー」
「今日会いたい」故郷に残してきた彼女の言葉に、新入隊員は深夜の脱柵を試みる・・・若い隊員の脱柵のエピソードまではベタな感じがしましたが、その後のふたりの会話で一変。さりげない大人の雰囲気がいいです。悲劇の主人公を演じる自分に酔いしれるのも大概にしないと。
●「ファイターパイロットの君」
娘から初めてのキスの話をせがまれた高巳は、妻でパイロットの光稀とのことを振り返る・・・いかにも守っているって感じがいいですね。“強くて、きれいで、凶悪にかわいい”光稀がウブで純で、というのはある意味反則。ドッグタグへのこだわりがおもしろいです。
ほどよくあま〜い恋愛小説集。自衛隊の特殊性がいろいろな形で生かされていて、これはやったもん勝ちですね。自衛隊ネタでまだまだ読ませてほしいというのが本音。
『空の中』『海の底』よりも先に読んでしまったのは、やはり失敗なのでしょうね。早めに読みます。
収録作:「クジラの彼」「ロールアウト」「国防レンアイ」「有能な彼女」「脱柵エレジー」「ファイターパイロットの君」
【感想拝見】- じゅずじの旦那さま(2008.07.14追加)
クジラの彼 | |
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