氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク2』

 東宮から即位した鷹男の帝は瑠璃姫にあてて頻繁に文を送ってくる。帝大事の高彬はまったく頼りにならず、堪え切れなくなった瑠璃姫はついに尼寺へ。だがその夜何者かの手によって三条邸が焼け落ちてしまう。そこには『瑠璃姫 怨』と書かれた呪詛状が残されていた・・・


 瑠璃姫、高彬、鷹男の帝の三角関係になるのかと思いきや、急展開を見せる2巻。1巻を読む限りではかなりコメディの要素が強いかとも思いましたが、意外なほどにシリアスな物語でした。後半の怒涛の展開は涙ものです。
 『海がきこえる』を読んだときにも思ったのですが、氷室さんは読者と主人公の気持ちを一つにするのが本当にうまいですね。自然と瑠璃姫と同じ気持ちになれます。瑠璃姫が嬉しいときは嬉しいし、瑠璃姫が哀しいときは哀しい。だから、生真面目で堅物の高彬が見せる優しさも、それを受けた瑠璃姫の気持ちもよく伝わってきます。
 高彬と言えば、今回は大活躍でした。鷹男の帝の一大事に几帳の陰から飛び出して謀反人に斬りつけたり、その謀叛人を追いかけたり。
 そしてあの最後の一言は殺し文句。きっともうあの人とは会えない。心のどこかで二人ともそう確信していたからこそ、出てきた言葉なのでは。
 切ない、本当に切ない、そんなラスト。そこには、瑠璃姫と高彬が手を携え、乗りこえていかなくてはならないものがあります。


関連作:『なんて素敵にジャパネスク

2008年6月10日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
なんて素敵にジャパネスク〈2〉 (コバルト文庫)
なんて素敵にジャパネスク〈2〉 (コバルト文庫)氷室冴子
集英社 1999-04
売り上げランキング : 136223

おすすめ平均 star
star華麗な恋と冒険の王朝物語
star笑いあり涙あり

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
asin:4086145693 rakuten:book:10763310