朝倉かすみ『田村はまだか』

 ススキノにあるバー「チャオ」。深夜になってもクラス会の三次会をしている5人は、一人の男を待ち続けていた。男の名は田村。彼は大雪で到着が遅れ、クラス会には間に合わなかった。四十になる男女5人は、彼を待ちながら口々に過去を振り返り、語りだした・・・


 やってくるのを待ちながら、過去を振り返る。それだけのはず。いつ来るか、いつ来るか、そう思いながら、ひたすら待ち続ける。「田村はまだか!」と繰り返しながら。そこには過去に対する悔恨や淋しさがあり、あの「孤高の小学生」だった田村なら何とかしてくれるのではないかという期待があるようにも見えました。
 こういう作品、こういうテーマは嫌いではないのです。自分がそういう年なのかどうかはともかく、過去を振り返る話。
 でも、いい話が多かった反面、もう少し田村を絡めたエピソードにして欲しかったという希望があります。そこで、今何故田村なのか、田村を欲するのか明確にされていてもよかったのではないでしょうか。
 また、最後の大きなエピソードはなくてもよかったのでは。なんとなく無理矢理つけたような印象がします。


 四十になった同級生たちの半生がリアルに語られるのがいいですね。また、「チャオ」のマスターがとてもいい雰囲気を持っていました。5人の名前が明らかになるにつれ、彼らが身近になってくるような気がしました。雪の中の、心があたたかくなる物語です。

2008年6月3日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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田村はまだか
田村はまだか朝倉かすみ
光文社 2008-02-21
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おすすめ平均 star
starどこかで聞いた名前・・・どこかで使われているネタ。
star絶対おすすめ!!
star心の奥深くをぎゅっとつかまれた気分。
stars第1章だけならよかったのに。。。
starsどうしても会いたい人。

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