小路幸也『高く遠く空へ歌ううた』
死体を見つける特性を持つ少年・ギーガン。義眼だからギーガン。彼は左目に義眼を入れて以来、泣いたり笑ったり、感情を表に出すことがなくなってしまった。久しぶりに見つけてしまった10人目の死者は根本さん。それは、9人目として彼の父親が自殺して以来、2年ぶりののことだった・・・
ひたすらにあたたかく、やさしい物語。不思議なことに、現実的なことが書かれている部分でも、どこかファンタジックに感じてしまいます。
柊さんやケイト、誠くん、あるいはルーピーといった同年輩の仲間たちとギーガンとの交流が見どころのひとつ。特にある出来事をきっかけにギーガンを守ろうとし、より強固になったルーピーとの友情は感動的。ひとつ間違えれば二人がバラバラになりかねなかった出来事を、丸く収めたギーガンの父親もまたすばらしいです。
その一方で、子どもたちだけでなく鎌倉のばあちゃんや田村先生といったギーガンの周りの大人も、いい味を出しています。
一見すると10人の死体の謎、そしてそれをギーガンが見つけてしまうことに重きが置かれそうですが、小路さんの目的はそこにはないのでは。これらの謎はギーガンたちの友情と成長を描くための演出のひとつに過ぎないのではないでしょうか。
作品全体を包むノスタルジックな雰囲気で、現代人が忘れかけたようなものを教えてくれる気がします。
関連作:『空を見上げる古い歌を口ずさむ』
高く遠く空へ歌ううた (講談社文庫 し 80-2) | |
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