石持浅海『君の望む死に方』
癌で余命幾許もないことを宣告されたソル電機の創業社長・日向貞則。日向は自分に恨みを持つ梶間晴征に殺され、しかも未来の経営幹部である梶間が殺人犯にならないために周到な計画を練った。その舞台は熱海にある保養所でのお見合い研修・・・
『扉は閉ざされたまま』に続く倒叙ミステリの傑作。まさかふたたびあの人*1が探偵役として登場するとは思ってもいなかったのですが。
被害者(予定)が主役という、相変わらず石持さんらしい変化球な設定。被害者(予定)、犯人(予定)、そして探偵役の三人が見えないところでせめぎ合うスリリングな展開が見事。特に日向の仕掛けた「殺されやすくなるためのトラップ」を、こっそり無効化していく探偵役がすばらしいです。
従来、古今東西の名探偵は事件がおきてからその犯人を推理し、探し当てるのが一般的でした。まず事件が起き、被害者が発生して初めて、名探偵の活躍する舞台が誕生します。ところがどうでしょう。この作品の探偵役は、事件の発生を未然に阻止すべく、日向の仕掛けをことごとく無効化するばかりか、事件に直接関係しない第三者の心理を巧みに操り、梶間が犯罪を起こしにくくする防御策まで発動するのです。おまけに事件発生前から謎解きを披露してしまいます。これはちょっと新鮮な探偵像でした。*2
また、自己正当化により日向の出した結論も突拍子もなく偏執的でなかなかおもしろいものでした。
こんな設定を導き出し、ミステリとして仕立てた石持さんに拍手。この切れ者探偵を生かした作品をまた読ませて欲しいものです。
関連作:『扉は閉ざされたまま』
【感想拝見】- 粋な提案さま(2008.08.22追加)
君の望む死に方 (ノン・ノベル 845) | |
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