アンソロジー『I LOVE YOU』

 タイトルどおり、恋愛をテーマにした6人の男性作家によるアンソロジー。
伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」
 千穂との遠距離恋愛突入が決まった僕がデート中に動物園で会った富樫さんは、姉の元恋人・・・そつのない一編。やさしく、あたたかみのある伊坂さんらしい作品です。「繋がっている」ことの幸せを味わいましょう。
石田衣良「魔法のボタン」
 恋人と別れて憔悴していた隆介は、飾りっけのない幼馴染・萌枝と待ち合わせた・・・いい話だとは思いますが、本当にそんなボタンを押していたりしたらちょっと恥ずかしいのでは? 相変わらずうまいです。
●市川拓司「卒業写真」
 「木内さん?」突然声をかけてきた熊のような男は、同級生の渡辺だと名乗ったが・・・このベタな題材はキライではないのですが、この語り口はちょっとあいませんでした。読みにくい。
中田永一「百瀬、こっちを向いて」
 人間レベルが低い僕は、幼馴染の宮崎先輩からの頼みごとを引き受けた・・・なかなかおもしろい恋愛小説でした。この方は某有名作家の別名義ということですが、もし噂されている方なら「人間レベル」という設定はなるほどと感じます。
中村航「突き抜けろ」
 彼女とルールを決めての交際。まあ順調だったが、友人の坂本に頼まれ先輩の木戸さんに会ったことで・・・どちらかと言えば、恋愛よりも友情に重きを置いた一編。ここだけ読むとちょっとよくわからない部分もあるし、場違いな気もしますが、加筆されて『絶対、最強の恋のうた』の一部になっているようです。
本多孝好「Sidewalk Talk」
 彼女を待つのはもう何度目だろうか。今日が最後の日なのに・・・離婚を決めた夫婦の最後のディナー。とにかく切ない。僕の中での本多評が上がった気がします。この後が気になる一編。


 アンソロジーは、未読や積読の作家を読むきっかけになります。今回、僕は中村さんや本多さんの積読本を読みたくなりました。
 これだけ豪華なメンバーが揃っているアンソロジーなので、誰か一人でも好きな作家がいたら手にとって欲しいですね。
 個人的には昨今の書き下ろしアンソロジーブームの火付け役になったと思っている作品集です。


収録作:伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」/石田衣良「魔法のボタン」/市川拓司「卒業写真」/中田永一「百瀬、こっちを向いて」/中村航「突き抜けろ」/本多孝好「Sidewalk Talk」

2008年5月6日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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