島本理生『シルエット』

 霧雨のような人・冠くん。恋人だった彼はある事情で女性の体に触れることに嫌悪感を持っていた。今の恋人、大学生のせっちゃんとはうまくいっているのだが、今でも別れた冠くんのことが忘れられない・・・「シルエット」


 第44回群像新人文学賞優秀作を受賞した表題作を含む作品集。その表題作「シルエット」は、高校生の「わたし」の恋愛を通して人と人との出会いと別れ、あるいは交わりというものを書こうと試みられた作品、でしょうか。
 正直、印象が薄く、あまりあとに残りませんでした。サラッとしていて捉えどころがないというか。確かにちょっと切ない物語ではありますが。読みやすい文章だけに、余計にそういう印象なのかも。
 これが現在の女子高生の等身大の姿なのかもしれませんが、結果として島本さんが書こうとしたことを理解できていないように思われます。
 むしろ、重苦しい事情を抱えながら生きていく冠くんのほうが気になります、いや、納得できるのです。


 「シルエット」は17歳のとき、併録された掌編「植物たちの呼吸」「ヨル」はそれ以前の作品ですから、今後に期待でしょうか。


収録作:「シルエット」「植物たちの呼吸」「ヨル」

2008年5月5日読了 【5点】にほんブログ村 本ブログへ
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おすすめ平均 star
star主人公の目に映るものは……影
starデビュー作
star電車の中で読んではいけません
stars散文詩のようです
stars大事なものはそばにあるのに

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