有川浩『図書館内乱』
図書防衛隊員として勤務していることを実家にひた隠しにしていた郁。だが、両親が水戸から郁の仕事ぶりを見学に来ることになってしまった。付け焼き刃で図書館業務をマスターしようとする郁。一方、堂上班の周囲でもそれぞれに様々な出来事が。彼らの敵はメディア良化委員会だけではなかった・・・
『図書館戦争』に続くシリーズ第二弾。短編のように分けられた5つの章立てで構成されています。
郁の両親がやってくる「両親攪乱作戦」、『レインツリーの国』をめぐる小牧と難聴の少女との恋物語「恋の障害」、柴崎目当てに男が来館する「美女の微笑み」、手塚の兄の理想が語られる「兄と弟」、そして図書隠蔽工作が思わぬ方向へ飛び火する「図書館の明日はどっちだ」と、人間関係を中心にそれぞれに難問が突きつけられます。人物がより掘り下げられて描かれることにより、新たな一面を出し全体の深みを増していくだけでなく、それがストーリーに直結しているあたり技ありです。
前巻の『図書館戦争』での小田原のときのような戦闘シーンはなく、もっぱら図書隊側の派閥抗争が中心。かけひきですよ、かけひき。タヌキとキツネの化かしあいのような。まさに「内乱」。
そういったストーリーの中にも、障害者問題や、少年法と実名報道の問題、そしてもちろん検閲問題と様々な問題がしっかり組み込まれ、消化されていていろいろ考えさせられます。
が、中でもやはり気になるのは「一刀両断レビュー」問題。やはり、自分が好きな本を貶されたくはないと思うのですが、中には自分の思いを代弁してくれたと喜ぶ人や、ムダな本を読まずに済んだと思う人がいるのかもしれません。個人がやる分にはいろいろな考え方があるでしょうが、やはり現実でも作中世界でも、図書館がやることではないでしょうね。
振り返って、自分が書く感想はどうかと言うと、10年前ならとにかく、今は辛口な一刀両断はできないですね、書きたくても。きっと評価基準が他の方に比べて甘いのではないかと。だから、これから読まれる方の参考にはならないでしょうね。
物語は最後の最後で大きな展開を見せて次へ続くわけですが、次の『図書館危機』では図書館や図書隊がどうなるのかだけではなく、郁と堂上の進展具合、さらには柴崎や手塚がどう動くのか、楽しみでなりません。
【感想拝見】
- 怪鳥の【ちょ〜『鈍速』飛行日誌】さま(2008.05.01追加)
図書館内乱 | |
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