乾くるみ『クラリネット症候群』
高校生の翔太は、持ち出した義父の大切なクラリネットを、不良たちの手で壊されてしまった。そのショックからか、翔太は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の音が聞こえなくなってしまう。しかも、どうやら関さんは事件に巻き込まれて拉致されたようで・・・「クラリネット症候群」
2001年に徳間デュアル文庫から刊行されていた「マリオネット症候群」と新作「クラリネット症候群」を合わせた1冊。
「マリオネット症候群」は以前読んでいるのですが、再読してみるとこれがまたおもしろい。身体乗り移りというか乗っ取りというか、よくありそうな人格転移ネタなのですが、その原因によって連鎖的に起こる乗り移りがなんともおもしろいのです。
また、乗り移った側と乗り移られた側が意思を疎通できないことによって、乗り移られた側を一傍観者にし、混乱した展開を導くだけでなく、最後の落としどころにサプライズを招く一因としています。お見事。
一方、新作の「クラリネット症候群」は拉致された関さんを救い出すために残された暗号の解読を試みる暗号もの。ただし、あくまでも暗号は添え物に過ぎず、その裏事情がポイントでしょう。「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」が聞こえないという状況により生じる会話に乾さんらしいセンスを感じます。ネタと伏線で満ち溢れ、無駄な部分がないのも魅力的。
文庫化された『イニシエーション・ラブ』も好評との噂を聞く乾さん。「苦しい」なんて言わずにもう少し刊行のペースを上げて欲しいところです。
関連作:『マリオネット症候群』
【感想拝見】- booklines.netさま(2008.04.18追加)
クラリネット症候群 | |
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