三上延『モーフィアスの教室』

 岸杜直人は、最近悪夢に悩まされて寝不足が続き、保健室で仮眠を取る日々。赤い眼をした怪物にクラスメイトが食べられる不吉な夢を見た日、そのクラスメイトは居眠りから目覚めることなく、病院へ運ばれて行った。幼馴染の綾乃は何かを知っているようだが・・・


 学園異能ライトホラー、とでも言うべきでしょうか。ホラーはあまり得意ではないのですが、なかなか楽しめました。この程度の描写であれば、苦にはなりません。
 全体的に重々しい雰囲気。派手さはないけれど、確実に読み手を物語に引き込んでいきます。読みやすく、そしてわかりやすい文章。盛り上げるべきところを盛り上げ、落ち着くべきところは落ち着かせるうまさがあります。
 また、直人をはじめとする登場人物たちも自然な感じの普通な言動をします。突飛なところがない分だけ地味かもしれませんが、リアリティが増して作品の雰囲気を作るのに貢献しています。出来事の事情を把握している綾乃は若干不器用でややエキセントリックかもしれませんが、それが読み手を煽っている点も外せません。


 ただ、ホラー小説の常として「得体の知れないもの」が怖く、おもしろいのだと思うのですが、それが明らかになってしまっては残されているのは描写しかないような気がして、今後ホラーとしてどうするのか、不安だったりします。
 おそらく、今後は直人の妹水穂が深く絡む展開になるでしょうし、棗もまた中心に引っ張り込まれることでしょう。人間関係とともに、今度はどういう形で恐怖が迫るのか気になります。

2008年3月2日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
モーフィアスの教室 (電撃文庫 み 6-20)
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