宮木あや子『雨の塔』
人里離れた岬の巨大な学園。そこは、それぞれの事情で世間から離れて暮らすことを余儀なくされた良家の少女たちが通うところ。さまざまな過去と環境を抱えた少女たちの感情は、閉ざされた空間でどこへ向かうのか。
『花宵道中』でデビューした宮木さんの第2作。
過去や身の上を明かさず、ただ1人の自分として距離を持って接していたものが、お互いのことを知り、その距離が徐々に短くなっていくにつれ、自分をコントロールできずに壊れていく。そんな切なさ、重さがとても息苦しく、それ故に読んでいるのが辛くなります。
登場するのはたった4人の少女だけですが、後半に近づくに従い書き分けができなくなっている気がし残念です。極端な特徴付けはいらないでしょうが、誰が誰のことを思い、誰を妬んでいるのか、だんだんわからなくなってしまいます。
良家の子女が隔離され、何ひとつ不自由しないような生活を送る学園。この設定は興味深く、この4人でどんな世界を作り出すのかと期待していたのですが、あまりにも儚く、残酷な結末に少々の驚き。
短いながらも密度の濃い世界でした。でも、時代物の方がいいかも。
- 粋な提案さま (2008.03.14追加)
雨の塔 | |
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