北森鴻『香菜里屋を知っていますか』
三軒茶屋に位置し、常連客が度数の異なる4種類のビールとオリジナルの料理、そして謎解きをお目当てにやってくるビアバー香菜里屋。だが、マスターの工藤はある日突然店を閉めてしまった。姿を消した工藤のことを尋ねて不審な男が常連客たちの前に現れ・・・
シリーズ完結編。
冒頭の「ラストマティーニ」から常連客など工藤の周囲の変化が描かれています。また、「背表紙の友」までの、常連客が人生の岐路において香菜里屋から離れていく様は、完結編らしい物悲しさ、喪失感に満ちています。工藤は今までどおりの香菜里屋らしいもてなしで常連客を送り出しますが、やはりそこにも何か違うものを感じるのです。うまいですね。
最後の表題作は、ボーナストラック的に冬狐堂、雅蘭堂、蓮丈那智など北森作品のシリーズキャラクター達がそろい、にぎやかな完結編となります。ここで明かされる工藤の人物像は彼らしくもあり、今までと違った一面のようでもあり。
まさに完結させるための1冊。ミステリとして読もうとすると若干弱いかもしれませんが、シリーズ通して楽しませてもらったことに感謝。いつか別の土地での活躍も読ませて欲しいものです。
収録作:「ラストマティーニ」「プレジール」「背表紙の友」「終幕の風景」「香菜里屋を知っていますか」
関連作:『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』
香菜里屋を知っていますか | |
北森鴻 講談社 2007-11-29 売り上げランキング : 7980 おすすめ平均 ちょっと拍子抜け? 「香菜里屋」シリーズ第四弾、最終巻 有終の美・香菜里屋。 シリーズ最終巻 余韻にひたる一冊 しんみりとしてしまう完結編 胸に残るは香菜里屋の灯 Amazonで詳しく見る by G-Tools asin:4062142910 rakuten:book:12632172 |