綾辻行人『十角館の殺人 新装改訂版』

 大分の沖に浮かぶ角島。そこは異端の建築家中村青司が十角館なる邸宅を残した孤島。半年前に連続殺人の舞台となった角島は、K**大学のミステリ研究会のメンバー7人が訪れたとき、ふたたび悲劇の島へと姿を変えた・・・


 言わずと知れた“新本格ミステリはここから始まった”という記念碑的作品。初めて綾辻さんの作品を読んだのですが、この作品を読む限り、ロジックよりもトリック重視という印象が強く残りました。なにしろ、あの衝撃の一行の破壊力といったら…あの部分がこの作品の肝のように思うのですが、旧版と比較すると、さらに強い衝撃が与えられるようになっていますね。
 また、中盤までに出てきた某専門用語もまた非常に効果的に活用されていました。これを事前に出しておくのとおかないのでは随分効果が違うでしょう。


 ただし、終盤の犯人による回想(=真相)は冗長に感じられ、また回想という形態を採ったことにやや疑問を感じました。なぜならば、これによってこの作品全体が静かに終結してしまったように感じられるからです。そこに関係する何者かがいて、犯人が追及されたり、糾弾されたり、あるいは自供したりというある意味お決まりのシーンがないために、やや最後の盛り上がりに欠けます。プロローグとエピローグを関連付ける意図があるのはわかりますが・・・


 全体を通してみておもしろい作品だったのは確か。20年前、この作品がミステリ界に与えた衝撃が大きかったであろうことは容易に想像できます。今でも十分に楽しめる本格ミステリの象徴的作品です。

2007年12月5日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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