恩田陸『木洩れ日に泳ぐ魚』
すべての荷物が運び出された部屋。この部屋で過ごすのも今夜が最後。だから、確かめなければいけない。高橋千浩と藤本千秋、二人は互いに疑っていたのだ。一年前のあの日、あの男を殺したのは、目の前のこの人に違いないと・・・
たった一晩の二人のやりとり。最後だからとお互いに胸の奥にしまっていたものを吐き出したかのような濃密な会話。まるで二人芝居を見ているかのような展開で、緊迫感がありおもしろかったです。
随所に恩田さんらしい巧さが見られます。特にこの二人だけのやりとりの中に最近のこと、一年前のこと、そして幼い頃のことと時を越えていろいろなエピソードを組み込み1つの物語として仕上げるあたりは本当に巧い。
ただ、最初から最後まで読んでいる間中もやもやとした感覚があり、それが晴れることはありませんでした。真相として解き明かされたものには裏付けがなく、いくら登場人物たちが確信を持ったとしても、読み手までが納得するようなものではなかったように思います。このストーリーを二人芝居にする限界なのでしょうか。謎解きとして読むのが間違いなのでしょうか。まあ、僕にはちょっと合わなかったということで。
【感想拝見】- 粋な提案さま(2007.10.05追加)
木洩れ日に泳ぐ魚 | |
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