若竹七海『水上音楽堂の冒険』

 自転車との事故で頭を打ち、記憶に障害を負った荒井冬彦。親友の静馬に頼まれ、真魚とともに水上音楽堂での卒業コンサートの準備を手伝った。だが、冬彦の記憶の件が発端になって、静馬と後輩の水江が喧嘩をしてしまう。そして翌朝、水江が遺体で発見された。容疑者は静馬。冬彦と真魚は静馬を救うために乗り出した。事件の鍵を握るのは、冬彦の記憶だった・・・


 もう15年ほど以前に刊行された若竹さんの第3作。表紙からして爽やかな学園ミステリを想起させるのですが・・・見事に騙された感じです。
 この初期の段階ですでに人間の悪意であるとか暗い部分に焦点を当てていたということは、前作にあたる『心のなかの冷たい何か』を読んだときにもわかっていました。この作品では主要な登場人物であろうが容赦なく表と裏を書き切っている点が残酷で特に心に残りました。
 とにかくビターです。後味の悪さはなかなかのものです。ファンはそれを承知で読むのですから苦にはならないかもしれませんが、軽いトラウマになるかも。


 繰り返される4文字の言葉が文庫化を阻んでいるとも言われていますが、そうであれば全面的に改稿してでも文庫化してほしい作品。いや、その方が新作を読んだようなお得な気分になれるかも。

2007年9月13日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
水上音楽堂の冒険
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