三崎亜記『となり町戦争』
ある日、突然戦争が始まることが告げられた。相手はとなり町。「広報まいさか」でそれを知らされた僕だったが、実際戦争が始まっても、銃声が鳴るわけでもなく、流血を目にすることもない。ただ、「広報まいさか」に掲載される戦死者の数だけが増え続けた。しかし、開戦から1ヶ月が過ぎるころ、戦争は僕に近付いてきた。
第17回小説すばる新人賞受賞作。第133回直木三十五賞、第18回三島由紀夫賞候補作。
巷では評価が高いことは十分に承知しているけれど、残念なことに僕には合わなかったようです。
自治体が戦争を公共事業の一環として取り組むこの世界において、ごく一般的な町民であるはずの「僕(北原修路)」が、この世界の戦争を読者が考える戦争と同じようにとらえているという設定が、あまりにおかしいのではないでしょうか。「僕」は異世界からやってきたとか、タイムスリップしてきたとかいう設定ではないのですから。
またリアリティが中途半端にありそうでなさそうで、奇妙なところでぼかされ、はぐらかされているようで、曖昧で後味が悪いのです。読者の想像に任せる、というよりは投げっぱなしのように感じました。
ただし、公共事業としてのとなり町との戦争という着想は大変ユニークで魅力的なものでしたし、おもしろくないと言いたいわけではありません。ただ、僕とはちょっと合わなかったのです。いっそリアリティを投げ捨てて、SFに徹していればと残念に思います。
【感想拝見】- booklines.netさま(2007.09.01追加)
- 粋な提案さま(2007.09.05追加)
- そういうのがいいな、わたしは。さま(2007.09.24追加)
となり町戦争 (集英社文庫) | |
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