永井するみ『カカオ80%の夏』

 恋多き母と暮らす三浦凪は高校二年生。同じクラスの雪絵から買物に誘われ彼女の服を見繕ったのだが、数日後に彼女は書き置きを残して消えてしまった。雪絵の母親から半ば疑われるかのように連絡を受けた凪は、なりゆきから雪絵の捜索を始めることになった・・・


 理論社ミステリYA!の1冊。
 ヤングアダルト向けということで主人公も17歳の高校二年生という設定なのですが、他人と群れることや甘えることを好まない凪のキャラクターとハードボイルド風味が上手くかみ合って、非常に楽しめる作品でした。


 しかし、見どころはそういったハードボイルド的な面ではなく、凪の成長にあるのではないでしょうか。
 その生い立ちや家庭環境からか、人と群れたり、人に甘えるということをしない凪。言動やファッションにも大人びたところがあり、一匹狼で人を寄せ付けません。友達もできないというよりは必要としないような人物なのです。
 ですが、彼女も17歳、雪絵の行方を捜すうちにどうしても一人ではいかんともしがたい場面が出てきます。そこで初めて人と関わることの大切さ、自分がどれだけ多くの人々に支えられ、助けられて生きているのかということに気付くのです。一人で立っていられるなんてことはないのです。ラストシーンは凪にとって今回の事件による最大の収穫でしょう。実体験から女友達の良さをよく知っている永井さんだからこその作品かもしれません。


 読みやすく、理解しやすく、そして何より続きが気になり読み続けてしまう作品でした。多少展開に都合のよさが顔を出すこともあったけれど、あまり気になりません。続編があればぜひ読みたいですね。

2007年8月21日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)
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