樋口有介『夢の終わりとそのつづき』

 警視庁の刑事を辞めて8ヶ月、雑文を書いてしのいでいた草平のもとに現れたのは絶世の美女だった。手付金の100万円を手に入れ、依頼されたとおり男を尾行し続けたのだが、男は毎日買い食いしながら歩くばかり。しかし、競馬のために一日代理を夢子に頼んだその日に、男は命を落としてしまう。しかも、死因は栄養失調と過労による衰弱死で、胃や腸は全くカラであったという・・・


 デビュー前に書かれた習作『ろくでなし』(1997年立風書房刊)をリライトし、装いも新たに柚木草平シリーズに加えられた作品。ということは『ろくでなし』では別の主人公だったわけで。


 “永遠の38歳”のはずの柚木草平35歳、刑事を辞めて8ヶ月ということからか、あるいはもともと20代の頃に書かれた習作だからか、セリフも行動もやはり他の作品に比べて若いというか、青い感じがします。
 ストーリーはちょっとSFがかった内容で、他の作品ではあまり見かけない傾向の作品かもしれません。その辺り、読み手によって好き嫌いが別れる可能性があります。もっとも、僕はこの程度なら全然大丈夫で楽しく読みました。
 ただし、習作当時のエネルギーをそのまま残したとあとがきにあるように、少々強引で無理やりな感じが漂うことは否定できません。柚木草平初心者にはあまりおすすめできない作品でしょうか。割り切って「ヤング草平」と考えればいいのかも。


 3歳分未熟で野心家な柚木草平。それだけでなく、やはりいつも以上に女性に振り回されている気がします。
「東京という街の困ったところは・・・・・・いい女が多すぎることだ」


関連作:『彼女はたぶん魔法を使う』『初恋よ、さよならのキスをしよう』『探偵は今夜も憂鬱』『誰もわたしを愛さない』『刺青白書

2007年7月21日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
夢の終わりとそのつづき (創元推理文庫)
夢の終わりとそのつづき (創元推理文庫)樋口有介
東京創元社 2007-07
売り上げランキング : 82464

おすすめ平均 star
starちょっとズルイ
star浮いているような…

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
rakuten:book:12090052 asin:4488459072