なぜ「本命・玻璃の天」ははずれたのか

 芥川賞直木賞の発表から一晩たちました。注目は直木賞。おそらく3時間以上かかったと思われるたいへん長時間にわたる選考会の結果、受賞作は松井今朝子さんの『吉原手引草』に。
 いろいろなところでの予想を読む限り、今回の本命は北村薫さんの『玻璃の天』のようで、これと同時受賞があるのか?ってところでした。僕も同意見でした。
 振り返ってみると、この意見の理由として多かったものは・・・

  • 前回は受賞作がなかった。今回はあるだろう。
  • 初候補が多い中、北村さんは5回目、松井さんは3回目の候補。
  • 前回も北村さんは有力視されながら、該当作なしという結果で、「だったら北村さんにあげてもいいじゃん」という雰囲気
  • 『玻璃の天』の版元は131回以降他社の受賞を退け続けている文藝春秋
  • 3部作中の2作目という微妙なポジションも直木賞好み。
  • 北村さんは今回候補作になっている森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』を山本周五郎賞に選んだ選考委員である。

 ざっとこんな感じでしょうか。
 あらためて見直すと、『玻璃の天』という作品の出来についてはほとんど語られていないのです。僕も含めて。これが落とし穴だったのでしょうか。もっとも、『玻璃の天』は受賞に値する作品だと思っていますよ。
 傾向と対策もいいけれど、それだけじゃ・・・ということでしょう。でも、そうすると全部読まないと予想できないということですよね。