橋本紡『月光スイッチ』

 ただ抱きしめあっているだけで感じられる幸せ。でも、大好きなセイちゃんには奥さんがいる。しかも、奥さんは出産を控えているのだ。奥さんが実家に帰っている間は、セイちゃんと一緒に暮らすことができる。二人だけの、仮の新婚生活の始まり・・・


 橋本さん流の不倫小説。でも、ほかの人のとはちょっと違う。
 いけないことだとわかっている、愚かなことだとわかっている。でも止められない想い。葛藤。泥沼・・・不倫小説というのは大体そんなところじゃないかと想像します。
 ただ、『月光スイッチ』の場合ちょっと違うんです。ドロドロした感じ、生臭さというか、下品さがないんです。ちょっとした修羅場もあるのだけれど、いたって爽やか。そしてのほほんとしているんです。扱うテーマは変わっても、いつもの橋本さんなんです。
 それは、文体がもたらす効果なのかもしれないし、さらに言えば言葉の選び方なのかもしれません。あるいは、登場人物の行動や性格によるものかもしれません。
 ストーリー自体はいたって平凡で、特別なひねりのようなものはありません。その辺のプラスアルファに欠けるのが残念。ハナちゃんのくだりはなかなかよかったですね。


 橋本さんの作品は料理へのこだわりも感じられるのですが、それ以上に今回は押入れという設定に家の中へのこだわりを感じました。階段とか、玄関とか、家の中を小道具的に今までも使っていたことを思い出したんです。中でも今回は一番説得力がありますね。

2007年7月10日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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月光スイッチ
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