大崎梢『サイン会はいかが?』
『配達あかずきん』『晩夏に捧ぐ』に続く、〈成風堂書店事件メモ〉シリーズの第3作。やっぱりこのシリーズは短編の方がいいのかな。
●「取り寄せトラップ」
同じ本の取り寄せ依頼が4人から入るが、4人ともそんな依頼をした憶えはないと言う。しかも、それが同じ4人でまたおきた・・・犯人の意図からすれば、別段書店の取り寄せを使う必要性はないように思われ、それが残念。
●「君と語る永遠」
社会科見学でやってきた小学生・千葉広希。書店に興味を持ったのか、何度もやってきていろいろたずねる。だが、彼にはひとつの疑惑が・・・心温まる一編。広辞苑がこんな役割を果たすとは思っても見ませんでした。
●「バイト金森くんの告白」
バイトの金森くんが宴席で語った失恋話。だが、どこか不自然な点が・・・ちょっと鈍すぎませんか。金森くん。
●「サイン会はいかが?」
取次が持ってきたのは、新進気鋭のミステリ作家・影平紀真のサイン会の話だった。ただし、サイン会にはひとつの条件があると言う・・・この暗号の出し方はちょっとまずくないですか。
●「ヤギさんの忘れもの」
常連客の蔵本が封筒に入れた写真をなくしたという。彼が立ち寄った棚には見当たらないのだが・・・目のつけどころとしてはおもしろいです。
前作『晩夏に捧ぐ』の感想に「書店員じゃなくてもいい謎」と書いたのですが、「取り寄せトラップ」とか「サイン会はいかが?」あたりはむしろ「警察に任せた方がいい謎」かもしれません。おもしろいですけど。きっかけは書店かもしれませんが、もう書店が単独で謎を解こうとするレベルの事件ではないでしょう。ちょっと首突っ込みすぎ。
ただ、本好き、本屋好きとしては、そこを舞台としたこういう作品たちは見逃せないわけで、もっと書店ならではの部分をうまく謎に結び付けていけばいいと思うのです。それにはやっぱり短編かな。
書きためたものがあったのかもしれないけれど、ハイペースで刊行されているので、このまま頑張ってほしいですね。
収録作:「取り寄せトラップ」「君と語る永遠」「バイト金森くんの告白」「サイン会はいかが?」「ヤギさんの忘れもの」
関連作:『配達あかずきん』『晩夏に捧ぐ』
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