村崎友『たゆたいサニーデイズ』

 部員たった二人きりの合唱部。春休み、新入生が入部してくることを期待する梢が入部希望者が記入するノートを開くと、そこには「中村雫」と記されていた。しかし、新入生はまだ入学前、しかも在校生に「中村雫」という人物はいなかった。この人はいったい誰なのか・・・


 第24回横溝正史ミステリ大賞を受賞した村崎友さんの受賞第一作。春夏秋冬を4つの作品からなる連作短編集ですが、各短編が非常に密接な関係にあり、実際は長編として解釈したほうが良さそうです。
 晶嶺館高校を舞台とした爽やかな作品。ただし、爽やかである反面、灰汁であるとか毒であるとかいう面が見られず、インパクトが足りません。梢や宮本をはじめとした登場人物に深みが感じられないからでしょうか。
 また、真相に至る過程での探偵役の宮本は残念でした。ミステリで探偵役に期待されているのは謝り続ける姿ではないと思います。たとえ、名探偵ではない素人探偵だとしても。


 ただ、この真相はお見事。思ってもいなかったかたちで世界を反転されました。まさに惹句にある通りの「切なくほろ苦い青春ミステリ」でした。
 もっとも、こんなに長いことひっぱり続けるような謎ではないでしょう。それと、繰り返される「たぶん、高校生って世界で一番忙しいよね」という発言はどうかとも。


収録作:「春のしずく」「夏のにおい」「秋のとばり」「冬のむこう」

2007年5月22日読了 【5点】にほんブログ村 本ブログへ

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