森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』
後輩である「黒髪の乙女」に心惹かれてしまった私は、夜の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭と彼女の視界に入ることのみ努力してきた。半ばストーカーである。しかし、彼女の言葉は「あ!先輩、奇遇ですねぇ!」・・・私と黒髪の乙女を待ち受けるのは、奇々怪々な面々が繰り広げる珍事件の数々。京都の町を縦横無尽に駆け回る純情ラブストーリー。
全編ご都合主義で、「おもしろいでしょ、おかしいでしょ」という物語。萌えてくださいと言わんがばかりの黒髪の乙女。まるで作者の手のひらに乗せられてしまったかのよう。
オモチロイオモチロイオモチロイ。
ここで僕がいろいろ書いたことを読むよりもまずご一読あれ、と言いたいところなのですが、そういう訳にはいかないので。
この作品の素晴らしさの1つは、圧倒的なパワーでしょう。ハチャメチャな人物たちが起こすハチャメチャな出来事。李白さんとの飲み比べや古本市での火鍋、あるいは韋駄天コタツや偏屈王といった数々の出来事のヘンテコな力強さ。思い出したのは高橋留美子さんの漫画『うる星やつら』。あのパワフルさがここに小説として甦ったかのよう。そういえば『うる星やつら』は鬼ごっこの話。追いかけると言う点では共通していると言えなくもないですね。強引なこじつけですけど。
それから、語り手のスイッチのタイミングが素晴らしい。ある程度の間隔を置いて黒髪の乙女と先輩(私)の間で語り手が入れ替わるのですが、出会っていないはずの二人がうまいこと後を引き継いで・・・というのは小説だから当然ですが、その人の一人称でなければうまく話が進まないところでスイッチしているようです。また、その導入部も珍妙でちょっとおもしろいのです。
という事で、オモチロイ物語だったのです。もちろん、独特の言い回しは健在。「恥を知れ!しかるのち死ね!」なんてセリフから、「偽電気ブラン」「おともだちパンチ」「ナカメ作戦」「詭弁踊り」「パンツ総番長」などなど。歯科衛生士の名前が羽貫さんってのはどうかと思うけれど、まあそれはそれ、これはこれってことで。
ともかく、オモチロイのでたくさんの人に読んでほしいのです。
なむなむ!
この本が「本屋大賞」に選ばれることを祈願せずにはいられない気分なのです。
なむなむ!
ところで、「二足歩行ロボットのステップ」ってどんなんだろう?
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