五十嵐貴久『パパとムスメの7日間』
もしもいまどきの女子高生をしているムスメと、中間管理職をしているさえないパパが入れ替わってしまったら・・・電車に乗っていた途中で起きた地震のショックで人格が入れ替わってしまった大嫌いなパパと最愛のムスメ。学校はもうすぐテストだし、大切なプロジェクトの御前会議も控えている。おまけにケンタ先輩との初デートも。はたして2人はどうやって切り抜けていくのか・・・。
『TVJ』以来、久しぶりに読む五十嵐さんの作品。作風広いですね。ホラーあり、時代物ありと1作ごと作風が異なります。器用貧乏にならなければいいと思うのですが。
さて、今回のテーマは入れ替わり。すぐ思いついただけでも東野圭吾『秘密』とか山中恒『おれがあいつであいつがおれで』なんてところがあるのですが、今作はドタバタをおもしろおかしく描いたエンターテインメント。難しいことを考えずに読み進めることができます。(ただし、最愛の娘に嫌われてしまったパパとか、業績下降中の老舗に勤める中間管理職の方は別かも)
小梅(ムスメ)が恭一郎(パパ)に自分の体を見られたくないがために目隠しで入浴させたり着替えさせたりするシーンや、イメージダウンを狙って恭一郎がケンタ先輩の前でビッグマックのセットを食べ散らかすシーンなど、お互いの利害関係や譲れない想いが映し出されています。しかし反対に、入れ替わってみて初めてわかるお互いのおかれた環境や苦労というものもあり、ほろ苦さを感じさせてくれます。
そして、なんといっても痛快だったのは御前会議。企業社会のことなんて何も知らないはずの小梅が黙っているように指示されていたにもかかわらず・・・中盤にやや中だるみを感じ残念だったものの、御前会議以降の緊迫感はさすが。
それにしても五十嵐さん、これ書くのにきっと女子高生のこととかフレグランスのこととかかなり調べたんだろうな。現実ではありえない設定(入れ替わり)なのに、なんだかリアリティがありすぎます。これくらいちゃんとリサーチしたほうがいいですよ、光聖堂のお偉いさんたち。
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