加納朋子『モノレールねこ』
モノレールねこ、それはタカキがあのねこにつけた名前。デブで不細工なあのねこに。僕とタカキはモノレールねこの赤い首輪を介して文通を始めたんだ。ただの一度も会ったことがないのに。(「モノレールねこ」)
『沙羅は和子の名を呼ぶ』以来7年ぶりのノンシリーズ短編集。
これはいいですね。家族を中心に人と人との心の交流を描いています。ミステリではないけれど、加納さんらしさが存分に発揮されている感じ。
●「モノレールねこ」
表題作。ある程度予想がつく結末。ただし苦い思い出の後味は悪くない。この辺が巧みなのでしょうか。
●「パズルの中の犬」
真っ白なパズルの中に見えた犬。思い出したのは・・・ 母親の実像や本音がなかなかおもしろかった。
●「マイ・フーリッシュ・アンクル」
ダメな伯父とともに残されてしまった私はどうする。共に暮らす家族であっても、どんなに知っているつもりでも、やっぱり知らない部分もあるのです。
●「シンデレラのお城」
親のために偽装結婚した相手は見えない人と共同生活していた。やさしく、切なく、そして残酷な一編。
●「セイムタイム・ネクストイヤー」
やっと授かった娘は失った母親は、娘の誕生日に思い出のホテルへ。切なさとあたたかさと、そしてやっぱり切なさが同居した作品。ありきたりかもしれないけれど、これが一番よかったです。
●「ちょうちょう」
順風満帆なはずだったラーメン屋店長の俺。だが、思ったようには続かなかった。不器用で素っ気ないやさしさが身にしみる作品。
●「ポトスの樹」
あの日、親父は溺れかけた俺を助けようともしなかった・・・そんなろくでなしの親父でもいいところもあるのです、加納さんの手にかかると。
●「バルタン最期の日」
バルタンと名付けられたザリガニは、水槽から一家を見つめる・・・ザリガニのハードボイルドという奇抜な設定と、現代日本の歪みのような部分がうまくマッチされています。
読み終えてから振り返ると、物語としてはありきたりかもしれない、この手の大まかなパターンはもはや分類できるほどに体系化されているのかもしれない、そんなことも考えてしまいます。しかし、それを読んでいるときに感じさせないのが加納さんの素晴らしさでしょうか。
収録作:「モノレールねこ」「パズルの中の犬」「マイ・フーリッシュ・アンクル」「シンデレラのお城」「セイムタイム・ネクストイヤー」「ちょうちょう」「ポトスの樹」「バルタン最期の日」
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