柴崎友香『その街の今は』

 16日に選考される第136回芥川賞の候補作。
 夏の終わりの大阪の街。勤めていた会社が倒産したことでアルバイトをしている歌ちゃんは、この街の昔を写した写真が好きで集めている。仕事のこと、男友達のこと、気持ちがゆれる28歳と移り行く街の物語。


 柴崎さんの作品を何冊か読んでみて感じるのは、何気ない日々の1コマだとかちょっとした街の風景を非常にうまく切り取っているということです。
 本書『その街の今は』でも、例えば合コンでの会話のやりとりだとか、あるいは通りで目に入ってくる景色や人の流れなど、取るに足らないようなところでもなんだかちょっと記憶に残るシーンにしてしまいます。それをやわらかな風呂敷で包み込んだ感じ。箱や封筒ではなく、風呂敷。
 もちろん、舞台は大阪ですから、関西弁の会話は今回も心地よく染み込んできます。


 僕は今まで芥川賞受賞作というのを読んだことがないので、そこにあるハードルの高さはわからないけれど、今回受賞してもいいのではないかと思える作品でした。
 でも、どうして智佐や百田さんたちは「ちゃん」なのに、良太郎は「ウタさん」なんだろう。

2007年1月10日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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starsその街の今は、そして昔は・・・
stars染み込む
starsほんものみたいな日常
stars「街」文学の傑作
starsスローライフ

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