誼阿古『クレイジーカンガルーの夏』

 長かった一学期も終わり、これからは楽しい夏休み。流れてくるはっぴいえんど。広樹にとっては、サッカーに明け暮れ、秀一、敬道、冽史と4人でプールに行き、そしてガンダムを見るという毎日を謳歌するはずだった。だが、東京から転向してきた従兄弟の冽史とは夏休みに入ったとたん、会えなくなってしまった。どうやら冽史の家庭の事情が絡んでいるらしい。忘れられない輝いた夏の出来事。


 想像していた以上におもしろい作品でした。単なる4人のひと夏の冒険であればそれほど評価はしないかもしれません*1。しかし、そこに冽史の家庭の事情や大人の見栄、価値観、体裁、そして広樹や冽史とのギャップが入り組むことで、少年たちは自ら階段を一歩、また一歩と上っていく様が非常に印象深い作品でした。


 広樹たちよりも少し年下の僕は、テレビゲームにどっぷり浸からずに普通に小川で魚やザリガニを捕まえ、広場でサッカーや野球をし、林でカブトムシを捕まえ秘密基地を造って遊んだおそらく最後の世代だと勝手に思っています。だからというわけではないでしょうが、少し年下の若い人の考え方が理解できなかったり、逆に年上の方の考え方に共感するということが多々あります。
 この『クレイジーカンガルーの夏 (GA文庫)』を書いた誼阿古さんがどういった年の方か存じ上げませんが、1979年という年はともかく、あの頃のこの世代という点でには大いに頷けるところがありました。


 著者インタビューによれば、2月に出る次回作は女の子を主人公にした作品だそうです。もしや『カンガルー』ではなく『フラミンゴ』だったりして。

2006年12月1日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
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*1:それはそれで好きです