大倉崇裕『福家警部補の挨拶』

 練りに練られた計画殺人。しかし、犯人を鋭く追い詰めていく一人の刑事がいる。福家警部補は巧みな話術と豊富な記憶、そして幾晩もの徹夜に耐えうる体力を武器に犯人の口を割らせてしまうのだ。コロンボマニアの手による倒叙推理作品集。


 倒叙推理といえばやっぱり刑事コロンボであったり、古畑任三郎であったりするのだけれど、その流れを確実に継いでいる作品集。これは楽しい。犯人の追い詰められていく心情を手に取るように理解でき、その一方福家警部補の心情はまるでベールの向こうに隠されているかのようにわからない、このギャップがスリリングです。


 コロンボも古畑も詳しいというほど見たわけじゃないのですが、この2つと本作『福家警部補の挨拶』を比較すると、端整に書かれた分だけユーモアが足りない。そしてこれは意図的なことかもしれないのですが、主人公である福家警部補の特徴が薄いかな。いっそのこと萌えキャラのようにしてしまってもいいかも。ただ、そうするとドラマ化したときのキャステイングが・・・
 こういった倒叙物の場合、警察や探偵役が犯人に目星をつけるきっかけとなるのが犯人のミスだったりすることが多いと思うのですが、そういったパターンを回避した「オッカムの剃刀」はその点だけでも唸ってしまいました。


 『ミステリーズ! Vol.19』には「福家警部補の災難」も収録され、シリーズは続いていく模様。次も楽しみです。


収録作:「最後の一冊」「オッカムの剃刀」「愛情のシナリオ」「月の雫」

2006年11月27日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ

【感想拝見】

おすすめ平均
stars次作が楽しみ
starsコロンボ』のスピリッツを継いだ、古典的で上質なミステリー
starsコロンボ、古畑を知らずとも楽しめます
starsコロンボの世界観!
stars心のこもったオマージュ

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