時無ゆたか『明日の夜明け』

 文化祭を一週間後に控えた夜見月高校。準備で下校が遅くなった早宮功たちが帰宅しようとしたところ大地震が発生した。山奥に位置する夜見月高校は交通と通信の手段を失い、陸の孤島となってしまう。周囲には触れるだけで痛みが走る正体不明の霧も発生、功たちの脱出を妨げる・・・


 第6回スニーカー大賞優秀賞受賞作。
 舞台設定は霧に包まれ外界と遮断された学校、止まった時計、告白する過去、校舎の中で1人ずつ殺されていく仲間たち・・・と、辻村深月冷たい校舎の時は止まる』を想起してしまいます。いや、『[rakuten:book:11020848:title]』のほうが発表は早いのですが。


 スリリングな展開でなかなか楽しめました。真相の告白にも納得。ただ単純に自分たちを襲う敵から逃れる、あるいは敵に立ち向かうというだけでなく、中盤以降暗緑色化していく足や腕の恐怖、殺人鬼の正体は実は仲間の誰かではないのかという疑心暗鬼、「魔女」と呼ばれる綺音、そういったものがうまく話を盛り上げ、より緊迫感を持たせています。
 また青春学園ものとしても悩みとか葛藤とかがしっかり書き込まれていて、読み応えがありました。
 ただし、登場人物の書き分けがあまりうまくできていない気がします。とくに主要な男性キャラの2人、功と剛はほとんど似たような感じで、たびたび確認しないと区別がつきませんでした。


 ぜひ次回作も期待、とか言いたいところなのですが、2001年にこの『明日の夜明け』でデビューして以来5年、時無さんの第2作って出ていないんですよね。いったいどうしちゃってるのでしょうか。残念。
 明日に向かって生きたいと願う心、そういったものが現代人には希薄なのかもしれません。だから自殺者とか増えているのかも。

2006年10月24日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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