水原佐保『青春俳句講座 初桜』
隣の教室から、カンニングはできるのか。どうして他人宛の郵便物がバラバラの手段で届くのか。お茶会に招かれた姉の恋人が雛飾りを見て逃げ帰ったわけは。高校生のさとみと俳人の花鳥先生が挑む日常の謎。
第9回角川学園小説小説大賞優秀賞受賞作。以前、「気になる1冊」として取り上げたこともある作品。その紹介文から、北村薫さんのような雰囲気を感じていたのですが、さすがにそこにはまだ手が届かない気がしました。*1
日常の謎を扱う場合、「いかにその謎が魅力的であるか」という点が大きなポイントです。例え文章が稚拙であったり、あるいは真相に脱力しても、謎が魅力的であればその欠点を補うことができる気がします。この『青春俳句講座 初桜』の場合、「桜」で扱ったカンニングの謎は魅力的だと思うのですが、他の2作で扱われる謎がイマイチ。どこがどう魅力的なのか、イマイチなのかと言われると答えようがないのですが。
もう1つ言うならば、俳句と謎の結びつきが薄く感じられたのも残念でした。
このように書いていくとかなり印象が悪そうですが、決してそういうことはありません。ちょっと硬めでそれでいて温かみを感じる文体もいいと思うし、ミステリとして謎にはしっかりとした真相がつけられていて、結構好きな作品集だったりします。おそらく遠くない将来に続編が発表されるでしょうから、そこからが本当の勝負でしょう。とにかく続編に期待です。
収録作:「桜」「菫」「雛祭」
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