佐々木譲『制服捜査』
長い間強行犯係であった川久保は、道警の不祥事による玉突き人事で志茂別という帯広近くの田舎町での駐在所勤務となった。妻子を残しての単身赴任である。しかし、管内で最低の犯罪発生率という田舎町は秘密を持っていた。
捜査に加わることができない駐在を描いた連作集。田舎特有の人間心理にリアリティがあり、ノンフィクションを読んでいるかのようで、こんな町もあるに違いないと思わずにいられませんでした。
本来、駐在というのはより地元に密着し、溶け込んでいくことが必要なのでしょう。そして不可解な人事によって駐在にされてしまった川久保を通して、人事の弊害が描かれるのだと思っていました。
しかし読んでみると、その人事を受け入れた上で志茂別の犯罪をなくし、田舎のエゴやしがらみ、閉鎖性に立ち向かう川久保の物語といったところでしょうか。特に「仮装祭」では、児童誘拐事件を捜査する中で、未解決になっていた13年前の女児失踪事件に絡む本当に対峙しなければならない敵を焙り出していく構造。僕たちに身近なところでも、こういったことはあるのかもしれません。
川久保は決して派手な活躍をするわけではありません。強行犯係としての経験や勘を活かして、時には広尾署に意見し、また時には地道に聞き込みをして情報を集める、しかし制服警官としての分をわきまえて冷静かつ大胆に業務にあたる彼が頼もしいのです。
この『制服捜査』が8年ぶりに読んだ佐々木作品でしたが、昨年好評だった『うたう警官』も読みたくなりました。
収録作:「逸脱」「遺恨」「割れガラス」「感知器」「仮装祭」
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