北村薫『ひとがた流し』

 千波、牧子、美々の3人は20年来の親友。作家の牧子は受験を控えた娘のさきと2人暮らし。美々は写真家の類と再婚しサポートに回っている。そして独身の千波はアナウンサーとして円熟期を迎えようとしていた。だが、千波が朝のニュース番組のメインキャスターとして抜擢されることが決まった矢先に悲劇はやってきた。


 この『ひとがた流し』は北村さんにとってはじめての新聞連載小説だそうです*1


 正直なところ、途中まではこの取り止めのない話がどこへ行くのだろうと、疑問に思わずにはいられませんでした。小さなエピソードが無数につながっていく感じ。それはありふれた日常の1コマを切り取ったかのようで、静かで平穏な毎日です。
 ですが、中盤以降の静かな盛り上がりや緊張感は、落ち着いた筆致でありながら深い感動を呼び起こします。特にエレベータのシーンなどは・・・
 人の死、特に病を扱う小説は苦手だったりします。どうしても目頭が熱くなるのを抑えられないから。


 家族愛、友情、恋愛・・・そういったものから人と人とのつながり、あるいは自分の生を切実に願う人の存在がどれだけ大切なものなのか、それを北村さんのあたたかい視線で見つめた物語です。なんともいえないような切なく、そしてやさしい余韻を残してくれます。

2006年9月10日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
おすすめ平均
stars深い悲しみもしみじみと流れていく
stars湘南ダディは読みました。
starsドラマのほうが良かった
starsNHKドラマより淡々と
starsこうありたい! 腹6分目の人間関係。

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